工業高校について興味がある人は
「工業高校って何を勉強しているんだろう?」
「工業高校って卒業後は優良企業に入れるって聞くけど、実際どうなの?」
などの疑問を持ちますよね。
しかし、工業高校に通った経験がある人でなければ、なかなかどんな学校か分かりにくいのが工業高校です。
工業高校についてネット上の情報を見ていると「工業高校に対して悪いイメージを持った人」や「実際の工業高校とは違う情報」で溢れていて、どれが本当の情報か分かりにくくなっています。
そこでこの記事では、実際に工業高校の機械科を卒業し現在は製造業に勤めている僕が「工業高校とはどんな学校なのか」について具体的に書いていきます。
工業高校について知らない方や興味がある方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
工業高校とはどんな学校?
工業高校とは、主に機械や建築、土木、電気などを専門的に学ぶことができる実業高校です。
基本的には製造業に従事することを前提としたカリキュラムが組まれていて、資格取得や部活動が盛んに行われています。
卒業後は製造業に就職する人が大多数を占めますが、大学、専門学校進学、公務員などに就職する人も毎年一定数います。
3年制で、専門科目があること以外は普通高校などとそれほど変わりません。
工業高校では、工業に関わる知識や技術について幅広く教育しており、その分野は多岐に渡ります。
ではどんな分野があるのか、少し例を出して見ましょう。
・工場の生産ラインを動かす機械の操作(旋盤、フライス盤など)
・土木工事に必要な測量
・設計の技術(製図やCADなど)
・鉄、木材、ガラスなどの材料や素材を作り出す技術
・建築の技術
・情報技術
・インテリアデザインとしてのデザイン設計の技術
などがあります。
たくさん分野があることが分かりますが、これらを全て学ぶ訳ではありません。
学ぶ内容は学科によって分かれていて、自分が興味のある学科に入ることで専門科目としてその分野を詳しく学ぶことができます。
学科選びの方法は下の記事にまとめているので、参考にぜひ!
【工業高校の学科選び|就職に有利な学科を機械科卒業生が教えます】
また、工業高校で学ぶ専門技術や知識は、世の中の人々の生活を支える基盤となっていることが多いです。
特に分かりやすい所だと電気科などで電気工事士の資格を取得すると、家庭の電気工事を行うことができます。
このように就職先は生活の基盤である職種が多いため、景気が多少悪くなったとしても、すぐに経営が悪化しづらい安定企業に就職できるところが工業高校のメリットではないでしょうか。
在学中に勉強を頑張れば大手企業への就職が可能なので、入社できれば将来は非常に明るくなりますね。
工業高校には実習がある
工業高校と一般的な普通高校との違いは、やはり実習があることでしょう。
実習とは、工業高校でその分野の技術や知識、さらには将来会社で配属されるであろう工場や開発現場での常識など、実践的なものづくりを体験することです。
そのため内容は非常に濃く、大学で学ぶような内容まで工業高校では学びます。
将来科学系の大学に進学する普通高校の学生と比べてみると、通常は大学で実験室を与えられ化学の実験や実習をしますが、工業高校の工業化学科ではその内容についてすでに高校一年の段階で学びます。
そのため工業高校生方が、理科学系の大学に入学した学生よりも研究実績が多いということが起きるのです。
普通高校の理系の学生が一度は憧れる白衣を着ての実験も、工業高校では3ヶ月もすれば叶ってしまいます。
また、機械科では機械部品を旋盤で削り出したり、材料力学などの引っ張り強度試験なども行います。
建築学科やインテリアデザイン学科では製図を行いますし、まさに建築家になりたい学生、家具のデザイナーになりたい学生には夢のような場所ですね。
早くから将来の目標が具体的にある人はぜひ工業高校でその分野に早くから携わり、プロフェッショナルになってキャリアをスタートさせることをお勧めします。
その代わり楽しいことばかりではなく工業高校には大変なこともあります。
実習をすると必ず「レポート」を提出しなければなりません。
ただでさえ難しい技術や理論についての実習を行っているのに
「レポートは何文字以上の考察を書け!」
と言われるので、レポート作成に毎月のように苦労することになります。
そこは同級生と実習内容の成果や実験データなどを共有し合うことで、お互いに助け合い実習を乗り切るしかありません。
しかしそうした大変な日常も工業高校ならではですし、貴重な青春の1ページとも言えますね。
実習はこのように大変ではありますが、期末テストなどで赤点を取らない限りは卒業できるので、普通高校のように大学進学を目的に必死に高得点を取らなければいけない環境ではありません。
工業高校は勉強面で苦労しないこともメリットの一つと言えます。
工業高校の生徒は中学時の成績が平均的である人が多い
工業高校は、高校や学科にもよりますが、一般的に偏差値は平均的です。
「普通高校の偏差値には及ばないけど、工業高校ならなんとか入学できそう」
という学生が実は大勢入学しているのです。
また、入学当初は工業を学びたくて入学した訳ではないとしても、何度か実習を繰り返すうちに、ものづくりへの興味が湧いてくることがあります。
僕もその一人で、工業高校在学中のCAD実習で設計の楽しさを知り、現在は機械メーカーで設計の仕事をしています。
工業高校に興味がある人は実際に工業高校のオープンスクールなどに足を運び、ものづくりを肌で感じることで、学びたい分野や興味の持てそうな実習が見つかるかもしれませんね。
もしかしたら将来のなりたい自分が見つかるかもしれません。
中学生はまだまだ可能性に満ち溢れている反面、まだこれといった自分がやりたいことが見つかっていない人が多いと思います。
そのため、「よく分からないけど大学に進学した方が良いみたいだから進学する」
と将来を決めずに勉強だけ必死に頑張って、大学に合格してから将来について考えるという学生が多いのが現状でしょう。
しかし進路とは逆算して考えた方が圧倒的に失敗が少なく、達成できる確率も高くなるのです。
また、とりあえずで受験勉強ばかりをする日々より、やりたいことがはっきりした状態で夢に向かって努力する方が勉強もはるかに捗ります。
そういった自分探し的なことも含め、目標が曖昧な人は工業高校のオープンスクールに行ってみてはいかがでしょうか。
工業高校からの就職先は工場が多い
工業高校から就職する場合、実際ほとんどの卒業生は工場に就職することになるでしょう。
工業高校は、「工場で行う作業や製作物がどのようにして作られるかを学ぶところ」といっても過言ではありません。
また就職後は、機械科、電気科、電子科、工業化学科、建築学科など基本的にどの学科を出ても作業着を着て現場仕事を行うことになります。
工場の場合は主に室内ですが、職種によっては外に出て管理、点検などをする作業もあります。
つまり、工業高校から就職した際の職種は肉体労働がメインなのです。
ですのでオフィスワークや頭脳労働といったホワイトカラーの仕事に憧れている人は少しがっかりするかもしれません。
しかし、工場勤務者全員が肉体労働かと言われると必ずしもそうではないのです。
肉体労働のブルーカラーのイメージが強いですが、工場の仕事全てがそうというわけではなく、設計や購買部門などは基本的にデスクワークがメインになります。
また、工場の作業員として働いていたとしても、いずれはオフィスワークをする可能性もあります。
その理由は、長年同じ会社に勤務して経験を積むことで、製品以外の部分(生産ライン全体)を理解し社内で認められると役職が上がり、現場には出向かなくなっていくからです。
いわゆる「出世して偉くなる」ということですね。
工業高校を卒業して工場に就職するということは、部長や課長になることは厳しいですが、勤務実績によっては工場長になることができるかもしれません。
工場長とは、その名の通り工場全体を仕切るわけですから、平社員と比べると当然給料も良くなります。
また、工場などの製造業は長い歴史と実績のある企業がたくさんあるので、そのような企業ではやはり年功序列的に賃金が上がります。
実は、きちんと年齢に応じて昇進ができる会社というのは、日本にごくわずかしか存在しません。
この点は製造業の強みと言えますね。
ですが工業高校から就職して間もない若い世代は
「給料が少ないから転職しよう!」
とすぐに思ってしまいがちです。
入社して早々に給料が高くなることはありませんが、勤続年数が増えていくうちに給料も上がるので安心してください。
若いうちは目の前のお金に飛びついていきたくなるものですが、18歳から65歳までの間でなんと47年間も勤務するわけですから、長い目で見たときに得をする方が良いですよね。
このように工業高校を卒業し製造業へ就職した学生は、社会的にとても恵まれているのです。
「工場勤務」と聞くとあまりかっこよくは感じないかもしれませんが、実際に大手企業の工場に勤務した場合は大卒で就職するよりも給料が高いこともありますし、社会的地位も高く、非常に人生が豊かと言えます。
また、周囲の人が自分を認めてくれますし、自分から自慢しないまでも優越感には浸れるかもしれませんね。
10年後、20年後には家族を養えるだけの経済力が持てたり、部下もできて、社会で活躍できるでしょう。
工業高校を卒業して大手企業に入るということにはそれだけ素晴らしい価値があるのです。
もし、「工業高校に少し興味が湧いてきた!」とこの記事を見て思ってくれた人は、是非一度オープンスクールなどに足を運んでみてはいかがでしょうか。
最後までお読み頂きありがとうございました。