工業高校へ入学すると、
「資格をとりなさい」
と先生から言われることがありますが、これは誰もが通る道です。
しかし、工業高校へ入学する人達は、これまで資格を取った経験がない人がほとんどなので、
「いっぱい資格があるけど、どれを取得すればいいんだろう」
と疑問を感じている学生さんも多いと思います。
そこで今回は、
「就職するのに有利になる資格だけ取りたい」
「将来役に立つ資格って何だろう」
「ジュニアマイスターって何?とる意味あるの?」
と考え込んでしまっている学生さんのために、わかりやすく解説しつつ、おすすめの資格を紹介していきますね。
ぜひ参考にしてみてください。
ジュニアマイスターって何?
・ジュニアマイスターとは、公益社団法人 全国工業高等学校長協会(全工協会)主催の顕彰制度です。
・1つの資格ごとに決まった点数が加点され、ある一定以上の点数を超えると表彰されます。
資格はランク付けされていて、ランクによって点数も違います。
Sランク:30点
Aランク:20点
Bランク:12点
Cランク:7点
Dランク:4点
Eランク:2点
Fランク:1点
・一定の合計点を超えると表彰される
ブロンズ:合計20点以上
シルバー:合計30点以上
ゴールド:合計45点以上
分かりやすく、私が工業高校の在学中に取得した資格でお話しますね。
危険物取扱者乙種第4類(Dランク:4点)
危険物取扱者乙種第1,2,3,5,6類(Eランク×5:2×5=10点)
計算技術検定2級(Cランク:7点)
毒物劇物取扱責任者(Cランク:7点)
情報技術検定3級(Eランク:2点)
の合計30点で、ジュニアマイスターシルバーで表彰され卒業しました。
当時の僕は、シルバー表彰の受賞を目指していたので、合計点が30点以上になるように計算しながら資格を取っていました。
資格のランク付けについてですが、一見ランクが高い方が「資格の難易度が高い」と思われがちですが、実はそうでもないのです。
中には難易度が低い資格で高い点数のものもあるので、高校3年間という短い期間の中でジュニアマイスター表彰を狙うなら、点数を計算しながら計画的に取り組むことが重要です。
ジュニアマイスター表彰を受ける意味
なぜ工業高校の先生たちは、
「資格を取るならジュニアマイスターを目指せ」と言うのでしょうか。
ただでさえ部活動やテストの勉強で忙しいのに、資格の勉強もして、
「ジュニアマイスター表彰を受けたら、どんな良いことがあるの?」
と思いますよね。
この理由は簡単です。
「ジュニアマイスター表彰を受けると、就職で有利に働くから」です。
工業高校の就職面接の際、面接する側の観点からするとジュニアマイスター表彰されていることは、その学生を評価するのに分かりやすい指標になります。
具体的に説明すると、私の経験上ですが、
●就活時にジュニアマイスターシルバー以上を持っている工業高校生は2割弱くらい
=他の学生より、資格取得に励んでいたことが分かる。
●ジュニアマイスターシルバー以上を持っている人は、ほぼ採用されていた
=他の学生と差別化ができ、合格率が上がる
ということです。
上記から、まずは就活までにジュニアマイスター表彰を目標にすると間違いないです。
工業高校のおすすめの資格
危険物取扱者乙種
危険物取扱者とは、火災につながる可能性のある物質を取り扱うことができる国家資格です。
工業高校から化学メーカー、石油メーカーなどに就職する際に役立つ資格になります。
難易度:簡単(暗記量多、計算少なめ)
基本的な化学の知識があれば、暗記するだけです。
ただし、乙種第4類に合格するための暗記量はかなり多いので、勉強時間は多く見積もった方がいいでしょう。
なお、乙種第4類に合格すると、その他の乙種は2/3の試験科目が免除されるため、かなり簡単に取得できます。
乙種全てを持っていると、就職の際はかなりプラスに働くのでおすすめです。
どんなことに役立つか
危険物取扱所の危険物保安監督者になるために必須な国家資格です。
どんな人が取るべきか
・化学系学科の学生
化学系学科でちゃんと勉強していました、という一定の水準になる資格です。
・ジュニアマイスター表彰を目指す学生
乙種全部取ると、14点の加点です。時間効率はかなり良いですね。
電気工事士2種
電気工事士2種とは、家庭用の電気配線に対して作業可能になる国家資格です。
ただし、工場用の電気配線等は電気工事士1種の範囲となるため、作業を行うことはできません。
難易度:難しい
工業高校生が苦手な電気に関する筆記試験と技能試験もあるので、この評価にしました。
電気工事士2種は、主に工業高校の電気系学科の学生が取得を目指す資格で、学校によっては全員合格を目指すことも珍しくないので、それなりに勉強すれば取得できる範囲になります。
どんなことに役立つか
企業としては、電気工事士2種を持っていれば、電気系トラブル解決に役立つ人材と評価され、また必要に応じて1種をとってもらおうと期待させることができる資格です。
どんな人が取るべきか
・電気系学科の学生
電気系学科の登竜門的な資格です。
・工場勤務の就職を目指している学生
私の個人的な見解ですが、
機械系学科の人が電気工事士2種の資格を持っていたら、履歴書見ただけで採用決まるんじゃないでしょうか。
前項で述べましたが、電気系トラブル解決に役立つ人材と評価され、かつその工場に必要な知識も有していることになるので製造業の就職にかなり役立ちます。
計算技術検定2級
計算技術検定2級とは、関数計算、方程式と不等式、応用計算などの問題を解く資格です。
数学が苦手な人だとかなり苦戦すると思います。
2級を取得しておくと、数学が得意であることを証明できるため、事務作業などの採用面接で有利になります。
難易度:数学に強い人は合格できるレベル
私は数学が得意だったので、少し勉強して取得することができました。
ただし、合格率は30%ほどと低いため、過去問などで計算練習をして試験を受けることをおすすめします。
どんなことに役立つか
あくまで個人の見解ですが、統計分析を学ぶ下地として最低限のレベルだと思います。
統計分析は品質管理では、必須な知識です。
どんな人が取るべきか
・数学が得意な学生
・ジュニアマイスター表彰を目指す学生
高校の数学基礎レベルの問題なので、7点加点は費用対効果がかなり良いのでおすすめです。
・進学する学生
進学するなら、このレベルの数学ができないと将来困ります。
2級ボイラー技士
ボイラー技士とは、工場、ホテル、病院などの空調を整えるために必要なボイラーを管理できる国家資格です。
ボイラー技士には、上位から特級、1級、2級と三段階の資格がありますが、工業高校では受験資格の条件がない2級ボイラー技士の資格が取得ができます。
難易度:難しい
2級ボイラー技士の試験内容は、ボイラーの構造、ボイラーの取扱い、燃料及び燃焼に関する知識、法令についてです。
合格率は20%ほどと低く、専門的な資格になるため暗記が必須です。
どんなことに役立つか
・ボイラー技士を必要としている業界に就職できる
就職後、実務経験を積めば1級、特級と階級が上がるため、ボイラーのスペシャリストになることができます。
手に職をつけることができるので、転職をする際も有利に働きます。
どんな人が取るべきか
・ボイラー技士として、将来働きたい人
・ジュニアマイスター顕彰を狙う人(Cランク7点加算)
工業高校で2級ボイラー技士の資格を持っている人は少ないため、就職の際に有利になります。
製図検定
工業高校で取得を推奨される製図検定は2種類あります。
1.基礎製図検定
基礎製図検定とは、投影図、展開図、立体からの投影図の図示など、機械製図において基礎的な技術を認定する資格です。
2.機械製図検定
機械製図検定とは、基礎製図検定の上位検定と位置付けられており、簡単な部品の製作図を作図する検定です。
難易度:簡単
・基礎製図検定
工業高校の機械系学科に所属している場合、ほとんどの学生が合格できるレベルです。
・機械製図検定
合格率は70%ほどで、製図が不得意な人でも繰り返し作図の練習をすれば、誰でも合格できるレベルです。
どんなことに役立つか
将来製造業で働く人全員が「図面を描く、見る」時に役立ちます。
工業高校から就職する人のほとんどが製造業に就職するため、この製図検定の技術はとても重要になります。
製図検定は、将来設計者になる人だけが必要とされる知識ではなく、組立者も図面を見て組み立てることが多いため、必ず取得しておきたい資格です。
どんな人が取るべきか
・将来製造業で働く人全員
技能検定(3級)
技能検定とは、働くうえで必要な技能の習得レベルを評価する資格です。
僕が工業高校の資格で技能検定をおすすめする理由は、2つあります。
1.技能検定は他の資格に比べ、試験が簡単であり合格しやすいから
2.技能検定はジュニアマイスターの点数が12点もあるから
上記の2つは、ジュニアマイスターを狙う人は必ず知っておいてほしい知識です。
技能検定には130種類の資格があるのですが、今回は機械系学科と電気系学科におすすめする資格について書いていきますね。
●機械系学科におすすめの技能検定3選
1.機械加工技能士(旋盤)
機械加工技能士とは、工作機械を使用し、金属を切削・研削する技能を証明する検定です。
製造業で、旋盤、研削盤、マシニングセンタなどを扱っている企業で役に立ちます。
2.機械保全技能士
機械保全技能士とは、工場などの機械設備の故障や劣化を防ぐために必要な技能を証明する検定で、一般的にどの工場にも当てはまる保全作業方法を習得できます。
製造業の機械保全部門で役に立ちます。
3.機械検査技能士
機械検査技能士とは、ノギスやマイクロメータなどの各種測定機器を使用し、機械部品の検査を行う検定です。
製造業の機械検査を行っている部門で役に立ちます。
●電気系学科におすすめの技能検定
・電気機器組立
電気機器組立とは、配電盤や制御盤といった産業用機器の組立を行う検定です。
製造業の電気部門で、機械動作の調整を行う際に役立ちます。
将来役立つ資格ってどんな資格?
資格は大まかに下記の種類にわかれます。
・国家資格:法律上、有資格者のみ可能な業務に従事できる
・民間資格:技能を持っていることを証明する手段になる
では、それぞれ解説していきますね。
国家資格を取得するメリット
国家資格を持っていると、就職後に役立つので将来的にメリットがあります。
例えば、工業高校のメジャーな資格である危険物乙種第4類について、
・一定規模以上の引火性液体を取り扱う事業所は、危険物保安監督者を定めなければならない
・危険物保安監督者は、危険物取扱者乙第4類(又は、甲種)取得者、及び6か月以上の業務経験が必要
と法令上規定されております。
つまり、一定規模以上の引火性液体を取り扱う事業所の数だけ、有資格者が必要ということです。
国家資格を持つことで、
「国家資格がないと従事できない作業ができる」ことになるので、就職後に役立つことは間違いなしです。
民間資格を取得するメリット
民間資格は基本的に、就職活動中に役立つ資格です。
例えば、品質管理系の仕事ができる人を採用面接する場合、
「品質管理検定(QC検定)」
を持っている学生がいたら、その学生を採用しますよね。
理由は2つあります。
1.あまり知られていない品質管理の意味を、最低限理解している可能性が高い
2.その資格を持っていることで、教育コストが少なくて済みそうと判断する基準になる
以上の点から、民間資格が就職活動中に大きなメリットになることをお分かり頂けたと思います。
工業高校で資格を取得する意味とは?
これまでたくさんのおすすめの資格を紹介してきました。
これらは、本当に将来役に立つ資格ですので、ぜひ勉強して取得してほしいと思います。
しかし、工業高校で資格を取得することについて、卒業後就職して気がついたことがあるのでお話ししますね。
僕は工業高校在学中にたくさんの資格取得に励みましたが、高校在学中と入社後の資格についてのイメージが全く違いました。
僕が工業高校在学中に感じていた資格のイメージは、
・資格をたくさん取らないと就職できない(資格は3つ以上は絶対必須と先生から言われていた)
・工業高校で取れる資格が将来かなり役立つと思っていた
この上記2つのイメージは、就職後に大きく崩れました。
・資格をたくさん取らないと就職できない
⇒同世代で持っている資格が少ない人も、ほとんど就職試験に合格していた
・工業高校で取れる資格が将来かなり役立つと思っていた
⇒工業高校で取得できるレベルの資格は、就職後に役立つことは少なく、業務上必要な資格は会社から受けに行くよう指示される。
つまり、社会人になって正直感じたことは、
「工業高校で資格を取る意味ってなくね?」
ということです。
先生から資格を取るように言われますが、はっきり言って資格が少なくても就職できます。
しかし、資格ゼロはだめです。
就職の印象が全然違いますからね。
工業高校の資格のベストな取り組み方
社会人になった今だから分かる、工業高校の資格に対するベストな取り組み方についてお話しますね。
先程の説明の通り、資格が少なくても就職はできます。
工業高校からの就職はほとんど採用されますし、企業選びも成績順です。
しかし、資格取得を頑張りジュニアマイスター顕彰を受賞した場合、履歴書に書けるので、就職の際に他の学生より有利になることは間違いありません。
これらを踏まえて、僕が思う工業高校のベストな資格の取り組み方は、
「企業選びのために高校の勉強は頑張りつつ、簡単な資格を取得してジュニアマイスター顕彰を得る」
ということです。
高校の勉強は、時間をかけて頑張ってください。
工業高校で一番重要なことですので。
資格は、前項で説明した技能検定が勉強時間もほとんどかけずに取得でき、ジュニアマイスターの点数も高いのでおすすめですよ。
最後まで読んで頂きありがとうございました。